紫紘さんの、素晴らしい紗袋帯のご紹介です。
残念なことに、この紗袋帯を専任で織っていらっしゃった職人さんの引退により、当面の間紗袋帯を織ることが叶いません。
現時点でご紹介させていただく現品以外、新作のご紹介はしばらくございませんので、この機会に紫紘さんの紗袋帯をぜひご高覧ください。
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紫紘さんにかかると、芒もただの芒にあらず。
シックな意匠の中に、季節先取りの枯野の情緒を感じる帯です。
まるで松虫鈴虫の音が響いてくるようです。
お盆も過ぎると芒に穂が出て、夕日に白く輝く様を美しく眺めています。
落日に照り映える芒を表現するのは、薄金の絵緯糸。
裏にわたした糸の紫がかった茶が、武蔵野の絵画を想起させます。
色無地や付下など格のある着物にも合いますが、個人的には上布(民芸調でないもの)や小紋と合わせてお洒落にお召しいただくのもいいですね。
年代を重ねていくことを楽しめる帯ではないでしょうか。
紫紘さんの紗袋は、濡れ緯(ぬれぬき)と言って、糸を湿らせながら織ることにより、打ち込みのしっかりしたしなやかな織生地となります。
汗をかく季節に、へたることのない地組織が、夏の着姿を涼しく保ってくれます。緯には銀糸が織り込まれており、銀が背景となることで、夏単衣に相応しい涼感が演出されています。
さらに、ぜひ耳のところにご注目ください。
ただでさえ織ることが難しい濡れ緯を、生地耳を織り込まず、かがるだけで仕上げていらっしゃいます。
ということは、湿ったり乾いたりする生地を5メートル分生地耳を揃えて織りあげ、かつこれだけ細かい絵緯糸や引箔を入れ、しかもお太鼓とお腹の2種類の別柄を破綻なく手機で織り切っておられる、ということで、これは実はものすごいことなのです。
熟練の職人さんが、夏も冬も関係なく、湿度を保ちながらひたすら機に向かっていらっしゃったそうです。
この集中力、根気。
作品として美しいのは勿論ですが、個人的には職人さんへの敬意の念が溢れてきます。
また、紫紘さんの紗は他社と比べて密度があるため、単衣時期にお使い頂きやすいのが特徴です。
絽や絽綴ですと7月8月中心になりますが、これだけ目が細かい紗袋ですので、6月から9月いっぱい楽しむことができます。
お出かけやお茶会、イベントなどが多くなる単衣の時期に、頼ることができるパートナーとして、重宝していただけることと存じます。
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西陣織の名門、「紫紘」。
源氏物語絵巻を西陣織で表現するという途方も無い仕事をライフワークとされ、素晴らしい帯の数々を残された故・山口伊太郎氏が創設した言わずと知れた名門の織匠。
山口伊太郎氏は、70歳から105歳でご逝去されるまで、国宝・源氏物語絵巻を西陣織で創作し、37年の歳月をかけて全4巻を製作されたことで有名です。
西陣織の芸術性、創造性を極限まで高めた人物として、西陣ではその名を知らぬ人はおりません。
紫紘さんの帯のファンの方もたくさんいらっしゃる事と存じます。
伊太郎氏が突き詰めた表現を、確実に、着実に受け継ぎながら、日々現代の意匠を取り入れ新しい創作を続ける紫紘さんの帯。
「あぁ、ええ仕事っていうんはこういう事なんや。」と腑に落ちる、引き算の図案と選び抜かれた糸の配色。
それを身に纏う喜びを是非感じて頂きたいと思います。
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【 ご着用シーン 】
6月~7月の茶会、お出かけ等でお召しください。
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【 伝統色のパーソナルカラー、秋、秋好中宮 】
オータムさんに映える配色です。
袋帯 | 紫紘 紗 芒文
- 素材 正絹
- 幅 8寸2分仕上がり基準
- 季節 夏単衣
- TPO 礼装に